水色とハルジオン

それは過去の愛の破片

大人になってしまった/ブロードウェイミュージカル『ピーターパン』2019 感想

こんなに残酷な物語でしたっけ。

 

まさか数ヶ月以上引きずるなんて。

ミュージカル「ピーターパン」2019ロスから抜け出せなくなりました。

 

 

 

はじめに

自分の中の「ピーターパン」の知識は小さい頃母親と一緒に見たディズニー版のアニメ映画のみ。我らが宮澤佐江ちゃんは2017年版のミュージカルにも出演していたのですがその時は都合で観に行けず。

 

ポケモン映画を見た事ありますか?

サトシとピカチュウと仲間たちがいろんな場所に赴き、そこで伝説のポケモンと邂逅してバトルしてまた次の旅に出るあの構成。

昔見た映画の「ピーターパン」もそれと同じ部類に頭の中で分類していました。

だって最後にウェンディと別れたピーターパンがネバーランドに帰っていく光景を見て「伝説ポケモンが元いた場所に帰るやつだ!」と画面に向かって手を振りながらバイバイしましたもん。

 

そんな清々しい記憶を頼りに10ウン年振りに「ピーターパン」に触れた訳ですが、なんだか心臓に爪がくい込んだような不思議な感覚になりました。

 

本編

迷子たちはティンカーベルの耳打ちによってネバーランドに到着したウェンディを弓矢で撃ってしまったわけですが。

地面に倒れ込んだウェンディを目撃したピーターパンが迷子たちに放った言葉というのが

「せっかく連れてきたのに!僕達の“お母さん”になってくれたかもしれないのに!」ですよ。

なんかアレ?って。「人を殺しちゃダメだ」とか「なんて酷いことを」でもなく。

倫理感や道徳感よりも先に自分のやろうとしていたことをめちゃくちゃにされてしまったから怒っているのが子供ゆえの残忍さだなと感じてしまって。 

 

フック船長は“お母さん”に対して「1番手に入れたいお宝」という見解を示しているのに窮地に追い込まれた際はウェンディに向かって「女を乗せた海賊船はろくなことがない」って海に突き落とそうとしますよね。

ひょっとして今まで海賊の元に連れてこられた“お母さん”達は皆海底に沈んでいるのかなと考えてしまったり。

 

そんな“お母さん”をめぐるネバーランドの中でタイガーリリー率いるインディアンだけは欲しがらないんですよね。“お母さん”を。

それどころか自らのスタンスを変える始末。

最初は「迷子たちの土地を奪え!ネバーランドはこのタイガーリリーが支配する!」なんていけしゃあしゃあと宣言していたのに、ピンチをピーターパンに救ってもらってからは助け合いの精神と楽しさを共有する方向に舵を切り出す。

でも1番現実的な方法ですよね。共有するって。

相手の考え方や生き方を認識して尊重するというのは多様性を受容する第1歩でもある。

ただタイガーリリーはピーターパンの肩を持つ形になり、海賊との戦い自体は避けられないわけですが。

まあピーターパンVS海賊VSインディアンの三つ巴になるよりかはピーターパン・インディアン連合軍VS海賊の方が勝算も見込めるわけで。

インディアンは賢い選択をしたなあ。

 

なんてしみじみしてるのもつかの間。最後の最後に爆弾を置いていかれてしまった。

 

迷子たちと元の世界へ帰ったウェンディは両親に一緒に住まわしてくれること頼み込んで了承を得てめでたく大家族の出来上がり。めでたしめでたし。

〜そして時は経ち〜

大人になって子供も産まれたウェンディの元にピーターパンが迎えに来るんですけど、当然お母さんになったウェンディは行けるはずもなく。

ちゃんと「大人になったの」と説明してもピーターは駄々をこねるばかりで。

さあどうするんだ…と思ってたら差し伸べられたウェンディの手を見たピーターパンが恐ろしいものを目撃したかのように後ずさりするんですよ。

手って、年齢が出ますよね。

きっとここで否が応でもウェンディが大人になってしまったことを認識せざるを得なかったんですね。う〜ん…リアルだ…

ただ、ピーターパンは永遠の子どもですから。ひとつのおもちゃが形を保てなくなっても、次のおもちゃを見つければすぐ飛びついて元気になれる。

ウェンディが大人になってしまったのならウェンディの子供をネバーランドに連れていけばいい!

というわけでウェンディの子供・ジェインをヘッドハンティング。心配するウェンディに向かって

「ダメだよウェンディ。君は大人になりすぎた。分かってるよね?」の一言。

ウワァ〜〜〜〜〜〜~〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜!!!!!!!!!!!!!!無邪気と残酷は紙一重!!!!!!!!!!!!

 

もうこの最後の最後でグサーーーッとやられました。

 

こんなに残酷な物語でしたっけ。

 

いや違いますね。「ピーターパン」の物語は昔からずっと形を変えていないはず。私がただ大人になってしまっただけなんです。

 

だけどこの「大人になったのはウェンディだけじゃなく私自身も」という事実が思ったよりも重くのしかかって切ない気持ちで胸がいっぱいです。

 

去り際のピーターパンに手を振っていた小さい頃の私の横で映画を見ていた母親も、もしかしたらこんな気持ちになっていたのかもしれませんね。

 

役者さん

ピーターパン役の吉柳咲良さん。

ほんとに少年!はつらつな少年声からちょっと艶めかしい声まで出せるのに声質が中性的なのがまた良い。

カツラoffメイクoff時はただの美少女。こんなに度胸あるのにまだ15歳ですって。これからが楽しみな女優さんです。

 

ジョン役の持田唯颯さん

「飛んでいこう!ネバーランドまで飛んでいこう!」の台詞、最初は畳み掛けるようだったのに中盤くらいから「飛んでいこう」の言い方にバリエーションが増えて表情豊かになったの、ウワ〜!成長が早い!と感動しちゃった

 

マイケル役の遠藤希子さん

天使。そして癒し。

こんな幼い子が「大人にならない」とか歌ってるとそれだけで涙腺が刺激されて仕方ない。

 

この未成年3人が大人になった時、今回の「ピーターパン」をどう思うのか楽しみだったりするよ

 

ライザ役の久保田磨希さん

2019年の「ピーターパン」をここまで優しくも強くも導いてくれたのはこの方あってこそ。子供たちに作中の分からないことがあったら近くの人に聞いていいんだよって念入りに言った後、「ここはそういう場所、いまはそういう時間」って締めてくれることのなんと心強いことか。

 

フック船長役のEXILE・NESMITHさん

グランドミュージカル並の迫力で絶対悪を演じてたネスミス。絶対これから舞台引っ張りだこになる。

ピーターパンの薬に毒を入れるの、手下に任せず自分で混ぜるのがめっちゃ好き

そして…

俺たちの!!!!!俺たちのネスミス!!

宮澤佐江ちゃんがAKBに在籍している時から推しを公言しているネッさん。佐江ちゃんアイドル卒業後の出演舞台をちょくちょく観劇している目撃情報はあったものの自分からは特にしゃしゃり出ることなく発信もしないヲタクの鑑。

 

ネスミスの偉業

・推しと舞台共演する

・推しを自分のカメラ連載の被写体として選び美しい写真群を世に残す

f:id:kinakoice:20190920155258j:image*1

 

・舞台上で推しに誕生日を祝われる

f:id:kinakoice:20190920155613j:image

*2

・舞台上で推しの誕生日を祝う


f:id:kinakoice:20190920155643j:image

*3

前世でどれだけの徳を積めばこんな偉業を成し遂げられるんだろうと思ってwiki見たらもう現世でEXILEとして10年頑張ってるんですね、そりゃ納得ですわ

あと個人的にネッさんのファン及びEXILEファンの方がフック船長とタイガーリリーの缶バッジいっぱい交換してくれて嬉しかったです(小並感)これからもネッさんのことは温かく見守ろうと思います。

 

ウェンディ役の河西智美ちゃん

とも〜みちゃんでお馴染みのとも〜みちゃん。

AKB現役時代の彼女の紹介文に必ずと言っていいほど「パフォーマンス力が高い」の一文が添えられていたのは伊達じゃない。

もう歌がハチャメチャに上手。べらぼうに上手い。高音が滑らかで心地よくてずっと聞いてたい。

ウェンディのメルヘンさにとも〜みちゃんの甘い声はベストマッチでした。もっともっととも〜みちゃんの歌声聞きたいです。

 

タイガーリリー役の宮澤佐江ちゃん


f:id:kinakoice:20190920175618j:image

*4

いやもうほんと…おかえりなさい、そしてありがとう。

また戻ってくる選択肢を選んだこと、ありがとう。

この作品を復帰作にすると決めたこと、ありがとう。

私は女優として表現する宮澤佐江ちゃんがこの世でいちばん大好きです。

艶かしい手の表情、情熱溢れるダンス、鋭く熱い目線、凛々しい佇まい。タイガーリリーの所作全てに心を揺さぶられっぱなしの2ヶ月でした。

2017年のピーターパンは観れなくて。卒業後唯一観れなかった作品がピーターパンだったから2019年にリベンジできて良かった。

いやほんとに。2019年のピーターパンに出逢えたこと、嬉しく思います。

どうやら佐江ちゃん本人は女優業以外にバラエティーとかいろんなことに興味があるようですが、表現している佐江ちゃんにいちばんときめく人がいるよってここに記しときます。

ただ、やりたいことは本人が気づかなくちゃ意味が無いので。佐江ちゃんのやりたいこと、新しい事務所でいっぱい泳いで探して下さいね。

 

おわりに

オチもなんもありませんが気になったことをひとつだけ

 

ウェンディと一緒に暮らせることになった迷子たちは『ハムレット』の本当の結末を知ることができたんでしょうか。

現実の世界にいれば辛いこともたくさんでしょうけど、そうやって「知る」のもまた大人になるということなのかなって私は思います。